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 作者:天地・白夜






西暦 2021年
6月24日 木曜日
PM 11:25




 雲一つない 静かな夜に。


[白夜]
:「そっちは大丈夫か?」



 どこかと通話をしている声。


[一光]
:「こちらは相変わらずです。兄様は元気ですか?」



 落ち着いた、少女の声がする。
 

[白夜]
:「ほんと、ひとみは兄思いな妹だな」


[一光]
:「もぉ、からかわないください」



 少々照れた様子の一光。


[白夜]
:「ごめん、ごめん。声を聞くの久しぶりだったからな。心配するな、元気だ」



 軽く微笑む白夜。


[一光]
:「元気なら、元気と早く答えてくださいよね。それでいつ帰ってこられるんで すか?」


[白夜]
:「もうすぐ だ、こっちの用事が終わったらすぐ帰る」


[一光]
:「早くして くださいね、兄様。そろそろ光希《ミキ》が痺れを切らします。と言うよりもうすでに切らしてます」


[白夜]
:「それは大 変だな」



 微笑む白夜


[一光]
:「まぁ、一 番問題なのは、兄様が来ないと始まらないことですけど」


[白夜]
:「わかっ た、すぐ帰るよ」





6月25日  木曜日
PM 12:00



 月の光に照 らされた洋風の館の中


[紗夜]
:「え〜と、 時間OK、宝石OK、魔方陣OK、あとは私の血を・・・・・・ッン」



 少女は自分 の指先を切る。


[紗夜]
:「この赤い 液体に血を混ぜて」



 三角フラス コに入っている赤い液体に紗夜は自分の血を混ぜる。


[紗夜]
:「ちょっ と、血が止まんないんだけど・・・・・・まぁ、いいけど」



 紗夜はあわ てづにハンカチを、切った指に巻く。


[紗夜]
:「よし!あ とは・・・・・・この混ぜた液体を、この透明な宝石?ガラスの石?どっちでもいいや。
  とにかく、滲みこませるのよね。ん?滲みこませる?!石に滲みこませるって無理でしょ。
  まぁ、とにかく液体をかける」



 液体は石に 滲みこみ、赤色に染まる。


[紗夜]
:「うそ!本 当に滲みこんだ!
  相変わらず父さんの書いた本は理解ができないわ。
  よし!後は召喚をするだけ」



 今まで見て いた本を閉め、近くのテーブルの上に置く。


[紗夜]
: 「・・・・・・」



 紗夜は魔方 陣の前に立ち止まると目を閉じ、液体の滲みこんだ石を両手で包むように持つと、静かに呪文を唱え始める。


[紗夜]
:「オニーテ トーテヤ、モンサヌーノ、トゥーケハマ。
  ケ、ハガ、ティトゥアカノエ・・・・・・
  レレケボレサフフエ」



 紗夜が光に 包まれ、魔方陣のようなものが周りに浮かび上がる。


[紗夜]
:「サマホケ ヌオ!」



 一瞬にし て、部屋全体が白い光で埋まると、何かが弾ける音がする。


[紗夜]
:「う わっ!」



 紗夜は音に 驚き尻餅をつく。


[紗夜]
:「イッタ 〜、失敗したって事はないわよね?」



 紗夜は魔方 陣が描いてあった方向を見る。


[紗夜]
: 「あっ・・・・・・」



 何かに圧倒 されたかのように口を閉じれずにいる紗夜。


[キューラ] : 「・・・・・・君に問おう・・・・・・私の、契約者か?」

01



6月25日  金曜日
PM 6:52



 人気の無い 林の中


[希歩]
:「ハァ、 ハァ、ハァ」



 何かに追わ れるかのように少年が走っていた。


[希歩]
:「クソッ! 何だってんだよ!」


[ゴッシュ]
:「しかし まぁ、『逃げ足だけは早い』とは良く言ったものだ。」



 希歩のすぐ 後ろから接近する一人の男。


[ゴッシュ]
:「ほらほ ら、このままでは追いついてしまうぞ?」


[希歩]
:「ハァ、 ハァ、ハァ」
 (遊ばれてるのか?)


[ゴッシュ]
:「うん?」



 ゴッシュと 希歩との間の地面が激しく弾ける。


[希歩]
:「!?」



 その瞬間、 ゴッシュは希歩との距離をとり、希歩はその場で立ち止まってしまう。


[キューラ]
:「おい少 年、足が休んでいるぞ?」



 一人の男が 希歩の前で凜として立っていた。


[希歩]
: 「・・・・・・?」



 希歩は何も 聞こえていなかったかのように、反応する。


[キューラ]
:「逃げろと 言っている」


[希歩]
: 「・・・・・・あっ!」



 今まで停止 していた希歩の思考が動き出す。


[ゴッシュ]
:「ほ〜、助 けが来るとはな。見たところ、そいつのバーゴイでは・・・・・・無いようだが?」


[キューラ]
:「走れ!」



 キューラが 声を上げ希歩に命令する。


[希歩]
:「くっ!」



 希歩はゴッ シュとは反対方向に勢いよく走りだす。


[希歩]
:「いったい 何なんだよ!」


[英]
:「ノア! こっちだ!」



 希歩を呼ぶ 声が聞こえる。


[希歩]
:「アキ ラ?!」



 希歩が英に 気づき、英がいる方向えと走る。


[希歩]
:「いった何 が起きてるんだ?!」


[英]
:「僕に聞く な!とにかく逃げるぞ」



 落ち着いた 口調で答える英


[希歩]
:「わ、わ かった」



 二人は林の 中を駆け抜ける。


[希歩]
:「ハァ、 ハァ、なんで・・・ここに?」


[英]
: 「ハァ、・・・生徒会の・・・帰りだ!ハァ、ハァ」



 二人はマラ ソンを走っているかのように肩で息をしていた。


[ゴッシュ]
:「どうだ? まだ走れるか?」



 希歩のすぐ そばに突如としてゴッシュが現れる。


[希歩]
:(いつの間 に?)


[英]
:「ノア、さ けろ!」



 希歩は倒れ こむように、横に飛び込む。



 希歩がいた 地面に、何か重たい物が突き刺さる音がする。


[希歩]
:(ギリギリ か・・・・・・)



 希歩は息を 切らしながらも、受身を取っていた。


[ゴッシュ]
:「ほ〜、避 けるか」



 地面には ゴッシュの剣が刺さっていた。


[希歩]
:(いくら逃 げても無駄か・・・それにアキラもいる)



 ゴッシュは 地面から剣を抜く。


[希歩]
:(やるし か・・・無いのか・・・・・・)


[ゴッシュ]
:「次はかわ せるか?」



 その一言で 一気に攻め寄るゴッシュ


[英]
:「ノア!逃 げろ!」



 それを反対 側で見ていた英が、希歩に向かって叫ぶ。


[希歩]
:(起動 ――)



 その瞬間、 鉄と鉄がぶつかり合うような音が響く。


[希歩]
:「――黒手 《こくしゅ》!」



 一旦、距離 を取るゴッシュ


[ゴッシュ]
:「面白 い・・・・・・」



 希歩かを見 たゴッシュは、笑みを浮かべる。



02



 希歩の左腕 は、鋼のように輝いていた。


[ゴッシュ]
:「だが 、まだ――」



 ゴッシュが 地面を蹴る。


[ゴッシュ]
:「――少年 だ」



 希歩が気が ついた時には、ゴッシュは目の前にいた。


[希歩]
:「!?」



 ゴッシュの 剣が速度を上げながら、下から突き上げられる。


[希歩]
:(これで終 わりかよ!)



 刹那、剣は ――


[希歩]
:(痛み が・・・・・・)



 ――刺さら なかった。


[希歩]
:「痛みが無 い?」



 現実に引き 戻された希歩は目を開き、確認するように目の前を見る。


[希歩]
:「ハァ、 ハァ」



 そこには ゴッシュの姿は無かった。
  たった一人、凛々しい女性が背を向けて立っていた。


[希歩]
:「またか よ・・・・・・」



 希歩は力が 抜け、崩れ落ちるように両手を地面に当てて、ひざまずいてしまう。


[トレザー]
: 「・・・・・・」



 女性が無言 で希歩に振り向き近寄る。
  希歩の前で止まり、剣を希歩の肩に突きつける。


[希歩]
:「ハァ、 ハァ、ハァ」


[トレザー]
:「惨め な・・・・・・」

03



 トレザーは 希歩を見透かすようにつぶやいた。


[希歩]
:「っく!」



 希歩は唇を かみしめる。


[トレザー]
:「お前に問 おう・・・・・・、私の契約者か?」



6月26日  土曜日
AM 3:00



 公園近くの 協会



 紗夜が公園 を一人で歩いていた。


[紗夜]
:「参加初日 からあのオタ神父を頼ることになるなんて・・・・・・」



 公園の協会 から一人の少年が出てくる。


[紗夜]
:「あれ?教 会に人?めずらしい。しかもこんな時間に・・・・・・」


[白夜]
:「こんばん は」


[紗夜]
:「こんばん は」



 挨拶だけを 交わすと去って行く白夜。


[紗夜]
:「要チェッ クね」



 それだけを つぶやくと協会の中に入って行く。



 協会の中


[紗夜]
:「オタ神 父!いるんでしょ!」



 協会の中で 声が響く


[オタ神父]
:「どうし た?こんな真夜中に?」



 協会の奥か ら低い男の声が聞こえてくる。


[紗夜]
:「聞きたい ことがあるわ」


[オタ神父]
:「それより も伝えたいことがある」



 協会まえ公 園


[白夜]
:「も う・・・・・・止まらない」



 白夜は言い 聞かせるようにつぶやいた。


[管理者]
:『ボレユ達 よ、神えの扉は開かれた!』



 低い男の声 が頭の中で響く。


[管理者]
:『さあ、歩 むがいい!力のため、己が願いのために!
  道は一つだ!さあ、“歩め!”』



 管理者の声 はが聞こえなくなる。


[白夜]
:「今日は満 月か・・・・・・」



04